月や火星の惑星表面は,非常に細かな砂(レゴリス)に覆われた 軟弱地盤環境が想定されます. このような砂地上を車輪型の探査ロボットが走行すると, 車輪の滑りに伴うスリップや,砂地への沈み込みによって, 走行不能状態(スタック)に陥る危険性があります. そこで本研究では,機械と土壌の相互力学関係(テラメカニクス)に基づいて, 不整地を走行するロボットの力学モデルの構築をはじめ, 実験的手法によるモデル評価, シミュレーション解析,サスペンションの設計開発などに取り組んでいます.

Contents

過去に行われた研究

砂地におけるクローラ旋回動作時の接触応力分布の実験的計測

多くの建設機械には,軟弱地盤における走破性が高いクローラが搭載されていますが、クローラの旋回性能に関しては未解明な点が多く,実験的にクローラ下部に作用するせん断応力分布を計測した例はありません.そのため,本研究では様々な条件でクローラを旋回させることが可能な旋回実験装置を製作し,当研究室所有のセンサ内蔵型クローラを用いて接地面応力の計測を行っています.

人工重力発生装置を使用した粉粒体の挙動解析

低重力環境では,月面の砂(レゴリス)がどのような特性を持つのか未だに解明されていないことが多いです.この研究では,人工重力発生装置のデータを基に,低重力環境下での粉粒体の特性を定性的・定量的に評価しました.レゴリス以外の粉粒体に関しても,画像データなどを使用して,特性の違いを見出しました.

軟弱地盤走行時における車輪スタック現象の実験的考察

軟弱な土壌を走行する自律移動ロボットにとってスタック状態(走行不能状態)は回避しなければならない状態です.しかし,スタック現象そのものの解明がされていません.そこで,当研究室所有の車輪走行試験装置を用いて実験的にスタック現象を模擬し,車輪と土壌の接地角度に着目してスタック現象の解明に取り組んでいます.

実験的検証に基づいた車輪土壌間の接触力学モデルの構築

3軸方向の力を測定可能な接触センサを導入することにより,従来では困難であった,車輪土壌間のせん断方向の応力を測定可能なセンサ内蔵型車輪の開発を行いました.本研究では,同車輪による軟弱地盤上での走行特性を高精度に計測することで,実験的なアプローチから車輪走行モデルの改善に取り組んでいます.

ラグ付き車輪を有する移動ロボットのエネルギ消費に基づいた斜面登坂性能解析

軟弱地盤を走行する車輪型移動ロボットの車輪には,走破性能を高めるためのラグとよばれる突起物が付いています.本研究では,このラグの効果について,ラグ高さが斜面登坂性能に与える影響を,エネルギー消費の観点に基づいて実験的に考察しています.さらに車輪の登坂軌跡と沈下の様相にも着目し,多角的な力学解析を行っています.

高精度な土壌掘削シミュレータの開発

本研究では,土壌掘削という対象物自体が変形する力学モデルをはじめ,走行部(履帯部)の接触力学,建設機械全体のマルティボディダイナミクスまでを包含した掘削シミュレータの開発に取り組んでいます.

Resistive Force Theoryを応用したバケットによる土壌掘削力学モデルの構築

建設機械の自動化あるいは遠隔操縦において,高精度な施工計画検証シミュレーション,オペレータ訓練のための高忠実度なシミュレータ環境が求められます.特に,流動する土壌という変形する対象物と,バックホウのショベル間の接触力学モデルは重要です.本研究ではResistive Force Theoryを応用し,掘削による土壌の盛り上がりを考慮した力学モデルの構築に取り組んでいます.さらに,提案モデルをロボット用シミュレータに組み込むことにより,建機のシミュレータの高精度化に寄与することが期待されます.